「不動産は、天からの預かりもの、天から一時的に預かっているもの)」とよく言われます。
税金という観点から見ると、「不動産は、国家からの預かりもの」ということになるでしょう。
様々な理由・事情から、好むと好まざるとにかかわらず、不動産の持ち主になった方には、取得時、保有時、譲渡時に負担、すなわち税金が掛かってきます。
そんな無縁ではいられない税金について、知識があればいろいろと得をします。はっきり言えば、その知識がなければ損をすることの方が多いです。
今回は、相続によって、その不動産を縁あって引き継いだ場面で関わってくる税金の概略をご説明します。
登録免許税
当センターではことあるごとに、不動産(土地・建物)を相続した際は、できるだけ早めに相続登記を行うことをお勧めしてきました。
この相続登記、すなわち相続した不動産の名義を書き換えるときに掛かってくる税金が、登録免許税(国税)です。
登記手続は、司法書士に依頼することが一般的ですので、あまり税金を納めているという感覚はないのですが、相続登記に限らず、登記を行う際に必ず納める税金となります。
登録免許税の税額は不動産の価額(固定資産税評価額)×税率で計算します。
不動産の価額(固定資産税評価額)
まず、この場合の固定資産税評価額は、該当する不動産のある市区町村役場で管理している固定資産課税台帳上の価格です。
固定資産税評価額は、不動産所有者等に毎年4、5月頃に通知されている、固定資産税納税通知書に同封の「課税明細」で概算額を知ることができますが、実際の登記手続の際には、登記申請書の添付書類として必要となる「固定資産評価証明書」(注1)を、当該市区町村役場で発行してもらう必要があります。
(注1)
この証明書は、所有者本人のほか、相続の場合は相続人(相続人代理の場合は相続人からの委任状が必要)など限られた者しか請求できません。
ちなみに、鹿児島市資産税課の場合、固定資産税関係証明(評価証明)の請求には1件300円(土地1筆・家屋1棟ごと)の手数料が掛かります。
税率
次に、税率の方は、所有権の移転登記の原因(理由)が、相続の場合は1,000分の4(つまり0.4%)、遺贈の場合は1,000分の20(つまり2%)とされています。
なお、税額を計算する際(税率を掛ける前)には、固定資産税評価額の1,000円未満の端数と、計算後の税額の100円未満の端数は切り捨てます。
また、税額について補足しますと、不動産の価額(固定資産税評価額)については、
- 不動産が共有されているケースでは、対象となる不動産の全体額に持分比率を乗じた額
- マンションなどの区分所有建物の敷地権(土地)については、建物の登記事項証明書にある「敷地権割合」に基づき計算した額
- 対象不動産の地目が「公衆用道路」の場合には、固定資産税評価額が非課税(0円)となっているものがほとんどですが、登録免許税の計算方法は、「近傍宅地の1㎡×公衆用道路の面積(×持分)×3%」(注2)
となります(計算における端数の切捨方法は上記と同じです)。
(注2)
「近傍宅地の1㎡」の価格については、この公衆用道路と同時に「宅地」を相続登記する場合は、当該宅地の固定資産税評価額(1㎡当たりの価格)を利用することができます。
納付時期・方法
登録免許税の納付時期は、相続登記の申請と同時に行うことになります。
また、納付方法は、登記申請書(別葉の収入印紙貼付台紙)に、原則として税務署に現金で納付し、その領収証を貼付するか、又は税額が3万円以下である場合などには、収入印紙を貼付して提出することによって納付することができるとされています。
印紙税
不動産を購入するときは、売買契約書を取り交わしますが、契約書には必ず印紙(収入印紙)を貼り消印します。これにより、印紙税(国税)を納付することとなります。
さて、相続手続において登場する遺産分割に関する協議が整ったことを示す書類(遺産分割協議書)には、印紙税が掛かるのでしょうか?
詳細は紙面の関係から割愛しますが、結論を先に申しますと、印紙税法(昭和42年法律第23号)では、遺産分割協議書は印紙税の掛かる文書とされていません。
つまり非課税です、良かったです。
その理由について、国税庁は、次のとおりの見解を示しています。
(遺産分割協議書) 相続不動産等を各相続人に分割することについて協議する場合に作成する遺産分割協議書は、単に共有遺産を各相続人に分割することを約すだけあって、不動産の譲渡を約するものでないから、第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当しない。 |
<該当箇所>印紙税法基本通達-別表第1 課税物件、課税標準及び税率の取扱い-第1号の1文書-8
相続税
相続税は、亡くなった方(被相続人)から、相続や遺贈によって財産の移転を受けたときに、この財産(遺産)を取得した個人に対して掛かる国税です。
そして、相続税は、被相続人から相続人が引き継ぐこととなる遺産の課税価格の総額が、遺産に係る基礎控除額を超えた場合に課税されます。
この基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)により算出します(H27.1.1~)。
計算方法
相続税額の計算方法の詳細は、以前の記事相続税の申告をご参照ください。
申告・納税の手続
課税価格の合計額が基礎控除額を超え、かつ、納付すべき相続税額がある場合には、相続の開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署へ申告書を提出する必要があります。
また、納付すべき相続税額がないケースであっても、配偶者の税額軽減等(特例)の適用を受けることによって、相続税額がはじめてゼロとなるときには申告書の提出が必要となります。
この申告書は、相続人などの申告義務のある方全員が、共同で1通作成することとされ、また、被相続人の死亡時における財産や債務等を記載した明細書や、戸籍謄本などを添え提出します。
なお、相続税の納付方法は、先の申告期限までに、原則一括して金融機関等で納付します。
法人などが遺贈を受けた場合
相続税は、被相続人が遺産を取得した個人に対して掛かるものと、先ほどご説明しました。
このため、個人ではない、つまり、相続に準じた取扱いとされる遺贈を、会社などの法人が受けた場合には、相続税は掛からないのですが、一方で、これらの法人や被相続人(遺贈者)側に対し、他の税金の掛かってくる可能性があります。
詳細は割愛しますが、
- 遺贈された法人に対して、法人税や事業税など、
- 遺贈した個人に対して(実際には納税義務の承継者に対して)、所得税(みなし譲渡所得)・住民税
が掛かってくることがあります。
さらに、遺贈先が同族会社(株式の大部分が親族に保有されている会社)の場合は、遺贈によって会社の株価が上昇する場合には、実際に相続人や受遺者となっていない他の株主が、この上昇分に相当する金額を遺贈により取得したものとみなされ、「相続税」の掛かるケースすらあります。
相続人でない方へ遺言により財産を渡したいとお考えの方も、ここまで心配しなくてはならないようです。ご心配な方は、お知り合いの税理士などにお問合せください。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産の所有権を取得したとき、その不動産の所在する都道府県から課される税金です。
結論から言うと、不動産取得税は、不動産を「相続」によって取得する場合は課税されません。
遺贈、死因贈与の取扱い
ただし、ここから先は少し複雑になりますが、
この相続には、被相続人から相続人や第三者に対する包括遺贈(「全財産を贈与する」、「遺産の4分の1を与える」など、財産を特定しないでする遺贈)、及び被相続人から相続人に対する特定遺贈を含みます。
このことから、被相続人が遺言で「相続人以外」の方に「特定遺贈」する場合には、不動産取得税が、その方に対して課税されることとなります。
一方で、遺贈と似たものに死因贈与(例えば、自分が死んだら土地を与えるとった契約によるもの)があります。これは契約ですから、相手方(受贈者)の承諾が必要です。
死因贈与は、贈与者の死亡により効力が発生する点で「遺贈」と類似していますが、受遺者(相手方)の承諾が必要となる契約行為に当たることもあって、死因贈与の場合は、相続人であろうと第三者であろうと、不動産取得税が課税されることになります。
なお、不動産の取得原因(理由)が売買、交換、贈与(相続時精算課税制度の利用時を含みます。)、建築などの場合には原則課税されることとなっています。
計算方法
不動産取得税の税額は不動産の価額(固定資産税評価額)×税率により計算され、税率は原則4%となっています。
例えば、相続人以外の方が特定遺贈によって1,000万円の宅地を取得すると、不動産取得税は4%の場合であれば40万円ということになるのですが、平成30年3月31日までの間は、同日までに取得した宅地等は不動産の価額を2分の1として計算することできたり、税率そのものが、例えば住宅用の土地・建物はいずれも3%とされるなど、一定の軽減措置があることもぜひ知っておかれた方がいいですね。
なお、不動産取得税は、保有時に毎年掛かってくる固定資産税等とは異なり、取得時に1回のみの納付となっています。
不動産取得税の詳細がお知りになりたい方は、鹿児島県ホームページなどをご覧になってください。