タイトルのような見出しの記事が、昨年(2015年)11月から12月にかけて新聞やネット上に掲載されていましたのでご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
一部引用してみます。
《引用》
日銀によると、2014年度の不動産業向け設備資金の新規融資額は銀行全体で7年ぶりに10兆円を超え、1989年度にほぼ並ぶ高水準だった。信用金庫は全体で2兆円を初めて超えた。
不動産向け融資全体でみると、15年6月末時点で地銀の伸び率は前年同期比6.6%増と、大手行の2.0%増の3倍以上だった。
地銀の不動産向け融資が伸びているのは、相続税の課税強化への対策としてアパート経営に乗り出す個人が増えていることが主因だ。
日銀による大規模な金融緩和の影響で市場金利が下がり、企業向け融資で十分な利ざやが確保できないことから、「アパートローン」に力を入れる地銀が増えているという。
《引用ここまで》
1989年といえば、まさにバブル期。この時期に並ぶ水準にあるということからみても、銀行全体の最近の不動産向け新規融資が大きく増えたことが分かります。
また、地銀の不動産向け融資の貸出先が、昨年(2015年1月1日)から相続税が実質的に増税されたことから、その対策としてアパート経営に乗り出す個人が目立つとのことです。
ご存知の方も多いと思いますが、現金・預貯金をそのまま持っておくのに比べて、不動産(土地・建物)をあえて借入金で購入することで、また、不動産に対する独特の評価方法もあって、ほとんどの場合、見込まれる相続税を節税できるようになります。
さて、最近のこういった融資の実状について、あまり良い傾向とは捕らえていない行政機関があります、金融機関の指導監督を行っている金融庁です。
記事を再度引用します。
《引用》
金融庁は、最近の不動産向け融資の増加について、バブル期のように経済全体として問題がある状態ではないとみているが、多額の融資が焦げつけば経営が大きな打撃を受ける恐れもある。
このため経営に与える影響を十分に考慮した融資や審査の態勢を各行が整えているか検証する。
《引用ここまで》
どうでしょう、「融資や審査の態勢を各行が整えているか検証する」としていますが、これは事実上、銀行全体、特に地銀などの不動産向け融資に対する監視の強化と言えます。
金融機関は、金融庁、政府の意向には逆らいませんし、ほかのどんな業界よりもその傾向は強いと思います。しかも横並び意識も強いです。
そして、地銀などの不動産向け融資に対する監視を強化することを打ち出した金融庁の方針は一見すると、適切な対応のようにも見えます。
確かに、金融機関の融資先が不動産向けに集中し過ぎてしまうことは経営上危険ですが、一方で、融資が焦げついて困るのは当の金融機関です。
個々の金融機関は、持ち込まれる融資、それが不動産向け融資であっても、一つひとつ独自に審査を行い、結果として多少の貸出リスクを取って融資しているはずです。
今回の金融庁の方針が、そんな金融機関の融資姿勢に変化をもたらすことはほぼ確実です、萎縮させると言っても言い過ぎではないと思います。
地銀や信用金庫が、不動産向けの融資残高やその増加率は他行と比較して目立ってはいけない、と考えるのは自然です。
良し悪しではありませんが、金融機関、特に地銀や信用金庫の不動産向け融資は、これまでと比べると縮小するのではないかと考えられます。
その結果、これも一概には言えませんが、融資を利用して購入・建設されることが通常の不動産は、大量の自己資金がある方は別として、融資が付かないことによって取引量が少しずつ減っていきますから、その価額が全体として下がっていくか、又はこのままで推移することが予想されます。
上がりも下がりも急激では困りますが、いずれにしても、2016年以降の不動産価格の動向を「監視」していきたいと思います。
(追伸)
今回の投稿は、あくまでも不動産事業、不動産投資に限ったものです。
一方、マイホーム取得のための「住宅ローン」についてはこの限りではありません。
政府が積極的に推進している政策を採っているからです。
しかし、マイホームを持ちたいという層の方がより慎重に判断することが必要です。
不動産投資を行おうとする事業者に比べ、どうしても計画が甘くなってしまいがちになるからです。