全国的に空き家、特に老朽化した空き家の存在が問題となっています。
適切な管理が行われていない空き家が、防災、衛生、景観等地域・生活に深刻な悪影響を及ぼしかねないといった理由からです。
これまで、こういった空き家については、一部の自治体がいわゆる「空き家条例」を制定するなどして、少しでも解消(解体や除去)を進めようとしてきました。
一方の国は、空き家の財産権(所有権)に課題があるなどとして対策に後ろ向きでしたが、平成26年になってようやく、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が議員立法により制定しました(平成27年5月26日全面施行)。
倒壊の危険の恐れなどがあるとして、同法上の「特定空家等」とされたものについては、その所有者に対し除去、修繕等の指導・勧告・命令を行うことや、場合によって強制執行が可能となる手続の明確化によるほか、同法と連動して土地の固定資産税の減免特例措置(家屋があれば、税額が更地の場合よりも最大6分の1となる優遇措置)も除外されるなどにより、今後、こういった空き家の解消が少しずつでも進むことが期待されています。
土地や建物の譲渡所得に対する税金(所得税)
さて、ここから本題に入ります。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
現在のところ、個人の方が居住用財産を売却により譲渡して利益が出た場合、その譲渡益から3,000万円まで計算上差し引く(控除する)ことができる特例があります。
[居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例]
ここで言う「居住用財産」とは、所有していた個人が自己の生活の拠点として利用している家屋(その敷地を含む。)とされており、一時的な利用の目的で入居した家屋などは該当しません。
このため、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」を受けるには、その家屋に譲渡者(所有個人の方)が原則、現に居住しているか、又は居住していた(一定の期間を超えていないこと)ことが要件となります。
空き家の譲渡所得について3,000万円を特別控除する措置(特例)
ところで、「平成28 年度税制改正の大綱」(平成27年12月24日閣議決定)を踏まえた法案が現在国会において審議されていますが、この法案中に、空き家の有効活用・流動化のための措置が盛り込まれました。
それは、「空き家の譲渡所得について3,000万円を特別控除する措置(特例)」の創設です。
すなわち、相続人が相続により生じた古い空き家又は当該空き家の除去後の敷地について、相続時から3年以内に譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円まで特別控除することができるというものです。
適用要件を詳しく見てみましょう。
相続発生日を起算点とした適用期間
相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、特例の適用期間である平成28年4月1日から31年12月31日までに譲渡することが必要
相続した家屋
特例対象となる家屋が、次の条件を満たすこと(区分所有建築物は対象外)
- 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されたもの
- 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住者がいなかったもの
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続時から譲渡時までの間に、事業、貸付、居住の用に供されていなかったもの
譲渡する際の条件
特例対象となる譲渡が、次の条件を満たすこと
- 譲渡価額が1億円以下
- 家屋を譲渡する場合(その敷地の用に供されている土地等も併せて譲渡する場合も含む。)、当該譲渡時において、当該家屋が現行の耐震基準に適合するものであること
他の税制との適用関係
- 本特例は、自己の居住用財産を譲渡価した場合の3,000万円の特別控除(前出)、又は自己の居住用財産の買換え等に係る特例措置のいずれかとの併用が可能
- 本特例は、相続財産譲渡時の取得費加算特例との選択制
少し補足説明しますと、
- 延長される可能性もありますが、特例の適用期間が平成31年12月31日までの譲渡とされていること
- マンションの一室等の区分所有建築物は不可であり、あくまでも一戸建て又はビル一棟に主眼が置かれていること
- 昭和56年5月31日以前に建築されたもの(旧耐震基準による建築物)であること
- 対象家屋に耐震性が無い場合は耐震リフォームを行ったものでなければ、その敷地を含められないこと
- 空き家を取り壊した後の土地(更地)は対象となること など
適用要件はそう緩くないようです。
そうは言っても、この特例を盛り込んだ予算案・関連法案が国会で成立すれば、空き家の有効活用と流動化はもちろん、少しでも空き家問題の解消へ向けたサポートになるのではないかと期待しています。
追記(H28.4.2)
所得税法等の一部を改正する法律案が平成28年3月29日に成立しました。これにより、上記の「空き家の譲渡所得について3,000万円を特別控除する措置(特例)」も施行されています(施行日:同年4月1日)。
かごしま相続相談・支援センターにおける取り組み
総務省の2013年住宅・土地統計調査によると、「利用目的の無い空き家の割合」を見ると、鹿児島県が最上位(11.04%)であり、以下、高知県(10.55%)、和歌山県(10.13%)、徳島県(9.87%)、香川県(9.71%)と続く結果だったとか。
相続遺言、成年後見などに関するご相談やお手伝いをお受けしている、かごしま相続相談・支援センターでは、こういったご相談・お手伝いに引き続いて、相続とは切っても切れない不動産に関する「売りたい」「買いたい」といったご希望に応じています。
不動産である空き家が、有効利用される財産「稼動産」となるよう取り組んで参ります。
鹿児島県が「利用目的のない空き家の割合」で最下位となりますように。